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Essay from KAORU SAITO
30%の「きちんと」感がモノを言う、
オシャレの反射神経

 ある管理職の女性を、オフィスに訪ねた時のこと。その人は、薄手のジャケットをふわりと肩にかけながら部屋に入ってきた。その一瞬の光景が、何だか今も目に焼きついて離れない。
 中に着ていたのは、ノースリーブのワンピース。露出した肩や腕を、さらりと覆うように、ジャケットをはおる。でも、腕を通してしまうと、ちょっと〝かしこまった印象〟になりすぎてしまうから、腕は通さずに、軽やかに肩に引っ掛けただけ……。おそらくは、どちらもとっさの判断なのだろう。上着をはおるのも、またその上着に腕を通さないのも。そうしたプラス・マイナスの計算も、オシャレの反射神経というものに違いないのだ。
 もっと言えば、これが初対面なら、その人はジャケットをちゃんと着て部屋に入ってきたのだろうが、もう何度も会っていて、軽い打ち合わせの後はランチをと言う約束をしていたからの、肩がけ……。
 本人はほとんど無意識なのだろうけれど、さまざまな状況を踏まえてのとても見事なオシャレの計算、その現場を目撃したからこそ、忘れられない場面となっているのだと思う。
 〝きちんと〟感も必要だけれど、〝きちんと〟すぎない。数字にして、30%位の「きちんと」感が欲しい今の時代。柔らかめのジャケットを、カーディガンのようにはおると、ちょうど30%位のきちんと感になるのだろうか。
 まさしく凛、として女らしく……そういう絶妙なバランスが映える季節にも、ぜひ30%の「きちんと」感を。

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齋藤 薫
Kaoru Saito

美容ジャーナリスト/エッセイスト
女性誌編集者を経て独立。女性誌において、 多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーとしても幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを掲載中。他、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。